◆Decoさん（「平原」）から「風の王国」の印象で描いてくださった文章（散文・詩）を頂きました！！
ああ、なんだか私の薄っぺらな漫画が１００倍くらい格上げされたような気分です。
ああ幸せ・・・(*^--^*)Decoさんはなんて美しい文章をお描きになるんでしょう！
綺麗な情景と言葉のリズムが気持ちいいです。本当にイマジネーションふくらむ文章です。
本当にありがとうございました〜〜(>_<)で、また挿し絵なぞつけさせて頂きました(^-^;;;

■　　風 白い石の柱だ。 心地よく色あせた白い柱が風景の中心。天高くそびえ、あるいは崩れて落ち、 何本かが寄り添って華奢な天蓋を支えている。 降り注ぐ日光が乾いた地面に影を落とす。薄紫の花びらがちらちらと舞う。 からんとした空気の中に眩しい光の欠片。 空は青。雲は白。海は銀色。 さわさわと人の気配がする。 漂うように、流れるように、音もなく歩く人々。 白い肌に、黄金の髪に、花びらが降る。 崩れた柱の上に少女が一人、素足のままで佇んでいる。 風が吹いている。 そう、この風景は知っている。でも何処で？　知っているはずがない。こんな場所は見たことがない。見たことがある筈もない。でも本当は知っている。ここは------ 神々の国か。 そうだ、ここは夢の中。 見たことのないふるさと、か。 肌を掠めてゆくものがある。これは何だろう？ 項を滑って髪を揺らす、ふんわりと、心地よいもの。 ああ、これは、歌だ。 旋律だ。 歌っているんだね。 響いている。 細い指先が弦を弾く。風が揺れて音になる。白い柱を伝って緑の蔦を揺らし、柱のひび割れが木霊を返し、音は寄り添っては離れ、重なっては散り、天蓋に響いて空へと抜ける。 あれは何という楽器だろう。四弦の心地よいフォルム。 綺麗な音だ。 唇からは歌。 吐息のようにささやくように、風に流れ水面に届き、小さなあぶくになって消える。 ヴィヴラート。 うっとりと。 響いているね。 幸福そうな歌声、だろうか？　そうでもない。 明るい旋律、だからこそ、つんと耳に染みる、もの哀しさ。 これは哀しい歌だ。 失ったものを嘆く歌。 優しい微笑みを浮かべた人々が、哀しみの歌を歌う景色。 夢だからね。 神々の国。 滅び行く神々の国か------ 本でしか知らない、ふるさと。 私のふるさと でも本当は解っている。私だけがここにそぐわない。 ほら、今一瞬旋律が歪んだ。あれは私のせい。私の衣を袖までも濡らす赤い血のせい。 これは私の夢じゃない。 私の夢は、追う夢、追われる夢。走る夢。微笑まぬ夢。殺める夢。 血を分けたものを殺し殺される夢。 生臭い匂いに満ちたあの夢こそが、私のもの。 あの夢が、私のふるさとだ。 そう、これはまぼろしだ。 夢よりももっと遠いまぼろし。 私はまぼろしなんかに惑わされはしない。 さあ、目を覚まさなければ。 戦うために。 殺めるために。 でも。 でも、もう少しだけ-------。 風が吹いている。 -----------------------------